戦争で株が下がるって聞いたけど、全部の株が下がるわけじゃないの?
いいところに気がついたね。実は、戦争や大きな出来事が起きたときに「すべての株が同じように下がる」わけではないんだ。業種によって、上がるものもあれば下がるものもある。今日はそのことを「セクター」という視点から一緒に見ていこう。
※ 本記事は2026年3月時点の情報に基づいています。
セクターってなに?
セクターって聞いたことあるけど、よくわからないんだよね。
セクターというのは、「業種のグループ分け」のことだよ。学校のクラスに例えるとわかりやすいかもしれない。
たとえば、学校には「1組」「2組」「3組」がありますよね。株式市場でも、似たような事業を行っている会社をグループに分けて管理しています。これがセクターです。
代表的なセクターには以下のようなものがあります。
| セクター名 | どんな会社? | 身近な例 |
|---|---|---|
| エネルギー | 石油・ガスを掘ったり売ったりする会社 | ガソリンスタンドの元売り |
| 防衛・産業 | 軍事機器や重工業の会社 | 戦闘機や船を作る会社 |
| ハイテク(IT) | 半導体やソフトウェアの会社 | スマホの部品を作る会社 |
| 消費財(一般消費) | 普段の生活で買うものを作る会社 | 洋服や車のメーカー |
なるほど、似た仕事をしてる会社のグループってことか!
そういうこと! そして大事なのは、世の中で大きな出来事が起きたとき、セクターごとに受ける影響が全然ちがうということなんだ。
2026年3月、セクターごとの明暗
2026年3月って中東で大きな出来事があったよね。セクターごとにどれくらいちがったの?
データで見てみよう。S&P 500のセクター別のパフォーマンス(3月の月初から24日ごろまで)がこちらだよ。
| セクター | 3月の変動(月初来) | 方向 |
|---|---|---|
| エネルギー | +18.2% | 大幅上昇 |
| 産業(防衛含む) | +14.7% | 大幅上昇 |
| 一般消費財 | -12.3% | 大幅下落 |
| ハイテク | 大きく下落 | 下落 |
え、同じ時期なのにこんなにちがうの!? エネルギーは+18%で、消費財は-12%って、その差30%じゃん!
そうなんだ。これは「COVID-19の暴落以来、もっとも大きなセクターローテーション(業種間の資金移動)」と言われているんだよ。
セクターローテーションとは、投資家のお金がある業種から別の業種に大きく移動する現象のことです。今回のケースでは、エネルギーや防衛といったセクターにお金が流れ込み、消費やハイテクからはお金が流れ出た、という構図が見られました。
なぜエネルギー株が上がったのか
エネルギー株が上がった理由って、やっぱり原油が関係してるの?
その通り。仕組みはシンプルなんだ。順番に見てみよう。
今回の中東情勢では、Brent原油の価格が大きく動きました。
- 紛争前: 1バレルあたり約71ドル
- ピーク時: 1バレルあたり120ドル
原油価格が約69%も上がったことになります。
原油が上がると、なんでエネルギー株も上がるの?
石油会社にとって、原油は「売り物」だからだよ。自分たちが売っている商品の値段が上がれば、売上も利益も増える可能性が高い、と投資家が考えるんだ。
大まかな流れを整理すると以下のようになります。
中東情勢の緊迫 → 原油の供給不安 → 原油価格の上昇 → 石油会社の収益増加への期待 → エネルギー株の上昇
たとえば米国の大手石油会社エクソンモービルの株価は、軍事作戦開始直後に約4%上昇しました。エネルギーセクター全体では3月だけで+18.2%という大きな上昇となりました。
石油会社にとっては原油が高いほうがうれしいってことか。
ただし注意してほしいのは、原油価格は常に変動するものだし、エネルギー企業の業績は原油価格だけで決まるわけではないということだよ。あくまで「こういう傾向があった」という過去のデータとして見てね。
なぜ防衛株が上がったのか
防衛株も上がったんだよね。戦争が起きると防衛関連が買われるのはなんとなくわかるけど、具体的にはどういう仕組みなの?
いくつかの要因が重なっているんだ。
防衛支出の増加
軍事衝突が発生すると、各国が防衛予算を増やす傾向があります。日本では2025年度の防衛予算が約8.70兆円に達しています。防衛関連企業にとっては、政府からの発注が増える可能性があるため、業績への期待が高まりやすくなります。
米国の防衛関連企業
米国では、防衛大手の株価が年初来で大きく上昇しました(2026年3月時点)。
| 企業名 | 年初来の変動(YTD) |
|---|---|
| ロッキード・マーティン | +約28% |
| RTX(旧レイセオン) | +9.81% |
S&P 500の産業セクター(防衛含む)全体でも、3月だけで+14.7%の上昇を記録しました。
防衛関連って、ふだんはあんまり注目されない業種だよね?
そうだね。ふだんは地味な存在だけど、地政学リスクが高まると急に注目されることがあるんだ。ただし、これは過去の傾向であり、防衛株が常に「有事に上がる」と断定できるものではないよ。
なぜ消費・ハイテク株が下がったのか
逆に、下がった業種もあるよね。なんでハイテクとか消費財は弱かったの?
これにはいくつかの理由が考えられているよ。
コスト増加の懸念
原油価格が上がると、輸送費や原材料費が上がります。消費財メーカーにとっては、商品を作って届けるコストが増えるため、利益が減るのではないかという懸念が広がりやすくなります。
景気後退(リセッション)への不安
エネルギーコストの上昇は、消費者の財布を圧迫します。「消費者がお金を使わなくなるのでは?」という不安から、消費関連の株が売られる傾向がありました。一般消費財セクターは3月に-12.3%の下落となりました。
ハイテク株の場合
ハイテク企業は直接的に原油の影響を受けにくいとも言えますが、以下の要因が影響したと考えられています。
- リスクオフの動き: 不確実性が高まると、値動きの大きいハイテク株から資金が流出しやすい傾向がある
- 景気敏感な側面: 半導体などの需要は景気に左右されやすく、景気後退懸念が重荷になった可能性がある
上がった業種からすると「追い風」だったことが、下がった業種にとっては「向かい風」だったんだね。
いい表現だね。まさにそういうことだよ。同じ出来事でも、業種によって影響の方向がまったく逆になることがあるんだ。
日本市場のセクター別の動き
日本ではどうだったの?
日本市場でもセクターによって明暗が分かれたよ。まず、3月9日に日経平均株価が52,728円まで下落し、1日で約5.2%の下げを記録したんだ。
防衛関連銘柄
日本の防衛関連企業の株価は、近年大きく上昇してきました。以下は2026年3月時点の株価と、2022年11月からの変動率です。
| 企業名 | 株価(2026年3月時点) | 2022年11月からの変動 |
|---|---|---|
| 三菱重工業 | 4,572円 | 約+650% |
| 川崎重工業 | 17,285円 | 約+280% |
| IHI | 4,215円 | 約+480% |
これらの上昇は、防衛予算の拡大や安全保障環境の変化を背景としたものと考えられています。
ハイテク関連銘柄
一方で、3月9日にはハイテク関連銘柄が大きく売られました。
| 企業名 | 3月9日の下落率 |
|---|---|
| ソフトバンクグループ | -9.81% |
| アドバンテスト | -11% |
| レーザーテック | -8% |
日本でもエネルギーや防衛は上がって、ハイテクは下がったってこと? アメリカと似てるんだね。
グローバルな市場は互いにつながっているから、大きなトレンドは似た方向に動くことが多いんだ。ただし、日本市場には日本固有の要因(円安の影響、日本の防衛政策の変化など)もあるから、まったく同じというわけではないよ。
まとめ
- 2026年3月、中東情勢の緊迫を受けて、株式市場ではセクター(業種)ごとに大きな明暗が分かれました。
- エネルギーセクターは原油価格の上昇を背景に+18.2%上昇し、防衛・産業セクターも+14.7%と大きく上昇しました。
- 一方、一般消費財セクターは-12.3%、ハイテクセクターも大きく下落しました。
- 日本市場でも防衛関連(三菱重工業、川崎重工業、IHI)が堅調だった一方、ハイテク関連(ソフトバンクグループ、アドバンテスト等)は大きく売られました。
- Brent原油は紛争前の約71ドルからピーク時120ドルまで上昇し、これがセクター間の資金移動の主な背景と考えられています。
- 同じ出来事でも業種によって影響の方向が異なるため、「株が下がる」と一括りにするのではなく、セクターごとの動きに注目することが大切です。
※ 本記事のデータは2026年3月24日ごろまでの情報に基づいています。市場の状況は日々変化しています。
ご注意: 本記事は株式投資に関する一般的な情報提供・学習を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。


